コペルニクス・著作等略年表

1509年 『教訓・田園・恋の書翰集』(テオフュラクトゥス・̪シモカッテス)翻訳刊行

1510年  この頃、「コメンタリオルス」完成か

1517年  8月、貨幣論の最初の草稿と目される「黙想」を執筆

1519年  プロシア等族議会のために、小修正を加えた「黙想」のドイツ語版を準備

1522年  3月、第2稿「貨幣鋳造の方法について」をグルジョンズの議会で提案

1526年     国王の招請に応じ、第3稿「貨幣鋳造に関する原則」を献策

1528年  決定稿「貨幣鋳造について  Monetae cudendae ratio」

1531年  「オルシュテインのパン価格の原則」起草

1543年  『天球の回転について』刊行 

 

<主な参考文献>

・"Nicholas Copernicus Complete Works.3   Minor Works"     Edward Rosen,Erna Hilfstein訳・解説(The Johns Hopkins University Press,1992年)

・アリチャ ヤルーガ、アンナ シフタ「コペルニクス-経済理論家および会計実務家として」 君塚芳郎、村井秀樹訳・解説(作新経営論集第4号,1995年)

コペルニクス貨幣論」 牧野純夫訳・解説(「コペルニクスと現代」所収 時事通信社,1973年)

高橋憲一訳・解説『完訳 天球回転論』(みすず書房,2017年) 

 

 

はじめに

 「コメンタリオルス試論」第8回が「早稲田文学」に掲載されたのは、2005年5月である。既に15年以上の空白ができてしまったが、やはり何かしらの決着はつけておきたいとの考えもあって、あえて上記の標題を選択することにした。

 

 もとよりこの試論は「コメンタリオルス」研究を意図したものではなく、過去の諸研究に関しての研究(下村寅太郎)と言うべき、文芸時評の要素を取り込んだメモランダムに過ぎない。新しく訪れる自然過程について実践的に考察するためには、常に清新であるがゆえに古典的な参照軸がどうしても不可欠であり、私の場合にはそれが、たとえばコペルニクスやマッハ、アインシュタインといった理論物理学者のテキストだったということである。

 

 以下の行論においても、数度にも及んだ「貨幣論」の改稿、あるいは「コメンタリオルス」から『回転について』への「問題移動」は、私の思考の結像度を不断に検証してやまない、強力な試金石であり続けるだろう。