はじめに

 「コメンタリオルス試論」第8回が「早稲田文学」に掲載されたのは、2005年5月である。既に15年以上の空白ができてしまったが、やはり何かしらの決着はつけておきたいとの考えもあって、あえて上記の標題を選択することにした。

 

 もとよりこの試論は「コメンタリオルス」研究を意図したものではなく、過去の諸研究に関しての研究(下村寅太郎)と言うべき、文芸時評の要素を取り込んだメモランダムに過ぎない。新しく訪れる自然過程について実践的に考察するためには、常に清新であるがゆえに古典的な参照軸がどうしても不可欠であり、私の場合にはそれが、たとえばコペルニクスやマッハ、アインシュタインといった理論物理学者のテキストだったということである。

 

 以下の行論においても、数度にも及んだ「貨幣論」の改稿、あるいは「コメンタリオルス」から『回転について』への「問題移動」は、私の思考の結像度を不断に検証してやまない、強力な試金石であり続けるだろう。